OKサトウタナカ

その時々の興味あることを節操なく書き綴っていきます。

久生十蘭にはまる

 作家にはまったのは佐野眞一ぐらいで、この人が書いた作品なら全部読みたいと思ったことは今までない。まぁ、そんなに本を読んでないのも大きく関係するが。短編小説「母子像」を書いた久生十蘭は、ただこれ一つ読んだだけなのに全集がほしいと強く思ったほど強烈な印象が残った。インターネットで調べると、熱狂的なファンがいまでも少なくない。初出の原稿に推敲を重ねて理想を追い求める作家だから、同じ作品でもかなり表現が違うものがある。など、彼の作品が出ている雑誌やら単行本をすべて集めて読めといわんばかりのエピソードが溢れている。

 全集はこれまで、三一書房国書刊行会から発行されている。底本(元にした原稿)が異なるから読み比べると面白いらしい。岩波文庫で彼の短編傑作編が発刊されているが、そのamazonレビューが参考になる。ひとりは、よくぞ久生十蘭をいまの世に復活させてくれた。もう一人は、底本が初出なのが首を捻る。推敲を重ねた後の版のほうがよいのでないかと。私自身、読み比べたことがないので何とも言えない。文学好きからすれば知らないのとバカにされそうだが、世の中には文学に限らず埋もれた作品や人が多い。それを発掘してその素晴らしさを伝えて再評価するのは、どの分野でも重要さを増してきていると思う。しばらくは、久生十蘭の作品にどっぷりはまろうと思う。