OKサトウタナカ

その時々の興味あることを節操なく書き綴っていきます。

アイドルヲタの気持ちを見事に描写

 あまちゃんがおしまい。アキとユイが畑野駅向こうのトンネルをサイリウムを振りながら走り、最後は母親の春子が高校時代に落書きした灯台に向けて堤防の上を全力疾走する姿をカメラが俯瞰する。

 いやあ、よかった。朝ドラなんて毎日見るのがめんどうだし、なにせ八方美人の内容が気に食わなかった。最近だと尾野真千子主演のカーネーションを前半終わりぐらいから見たぐらい。だけどこの「あまちゃん」は違った。第6週「おらのじっしゃん大暴れ」から欠かさず見始めて、回を重ねるごとに熱は上がり続け、今日まで下がったことはなし。昨年11月から今年5月ゴールデンウィークにかけての日経平均の勢いと同じ。アベノミクスじゃなくアマノミクス。ちなみに見てない回は、インターネットで探して視聴済み。TSUTAYAでは、今日からDVDレンタルが開始れているので、見逃した回を見るならこっちがおすすめ。しばらくは、貸出中だらけだと思うけど。

 全体にちりばめられた小ネタは、見る人の年齢によってウケが違う。やはりクドカンと同じ世代は、小ネタをたくさん拾える人が多いように思う。昨日発売のFRIDAYに甲斐よしひろが熱く語っていた記事がカラー1ページで載っていた。

 正月に帰省して、あまカフェでアキとグレたユイが言い合うシーン。

アキ:ダサい!? そんなの知ってるよ、やる前からダサいと思ってた。ユイちゃんがアイドルになるって言い出した時から。ダサいから、あの時駅で聞こえないふりしたんだぞ。そしたらユイちゃんもう1回言ったんだぞ。

 じゃあ、なんで一緒に潮騒のメモリーズをやったのかとユイが問うと、

アキ:楽しいからに決まってるべ!ダサいけど楽しいから!ユイちゃんと一緒だから楽しいからやってたんだべ!ダサいくらいなんだよ我慢しろよ!

 このセリフに甲斐よしひろは考えさせれたと記事に書いてあった。行間と前後を読むと、「好きな音楽の道で食っているんだから、多少意に沿わない(ダサい)くらいで文句言うな。そんなんでステージに立たないなんて言うならやめろよ」と甲斐よしひろは思ったのだろう。独立してさかなくんと一緒に共演した教育向け番組「見つけてこわそう」の元ネタを、娘さんと語り合ったことにもグッときった。これは気になっていたので思わず二度読みしてしまった。この番組で使われた「逆回転」は、その後、重要なキーワードになっていく。

Iggy Pop and the Stooges


Search and Destroy - YouTube

 

  小ネタの元ネタは関連本やあらゆるサイトで盛り上がっているから、そっちに任せておくとして、なぜ私がこれだけ引き込まれたのか。それは、アイドルとそれを追っかけるヲタの気持ちを見事に描写していたから。それに尽きる。観光協会のホームページに二人の動画が掲載されて、北鉄に鉄道ヲタとアイドルヲタが殺到するシーン。スナック梨明日で、駅長の大吉が春子に向かって「オタクさんは決して悪い人じゃない。礼儀正しいし、それに北鉄を舞台にした二人のマンガまで描いてくる人もいるし」と話すと、「気持ち悪い」と顔をゆがめる春子。

 恋愛禁止だけど、そんなのばれずにやっていればいいという太巻Pや鈴鹿ひろ美。さらにはミズタクまで。じゃあ、なんでいまだにアイドルは恋愛禁止をウリにしているのか。番組では「みんなのアイドルだから恋愛ご法度」という視点で描いていた。ここは、話が長くなるので割愛。驚いたのは、建前と本音をこれでもかっていうくらい使い分けて、物語を進行したこと。これは見ていて爽快だった。

 大震災でGMTとのジョイントライブは中止になったけど、前日に振りの練習をしていたヲタの集団。そのリーダー格の中年・ヒビキ一郎が、「アイドルがそこにいるから応援する」のセリフはアイドルヲタの心理を的確に突いている名言だと思う。「山があるから登る」と同じ境地にいるとは言いすぎか。

 女性アイドルと追っかけの男性ファンの関係は、あまちゃんの重要なテーマだ。それが、「オレ、あたしにとってのアイドルってなんだ」につながっていく。

 私がこころを鷲掴みにされたのは、甲斐よしひろと同じシーン。

「ダサいけど楽しいから!ユイちゃんと一緒だから楽しいからやってたんだべ!」

 「追っかけるのは勝手だけど、アイドル側の気持ちも汲めよ」とファンに訴えているように聞こえた。このシーンは、元アイドルヲタの心に強く刻まれた。