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OKサトウタナカ

その時々の興味あることを節操なく書き綴っていきます。

新刊書店は儲からない

 これは5月下旬に書いてずっと下書き保存していた。まだこの頃は、本の世界で生きていくと考えていたけど、いまはない。本好きでなく本屋好きなのがわかったから。本に囲まれた空間が好きなのであって、本がそれほど好きじゃないのがわかったから。街から次々と本屋が消えているのはなぜか。自分の視点でまとめてみた。

 

 新刊書店に勤めるようになってすでに早9ヶ月目。アルバイトで半年間働いて、その後、社員になると面接の時に会長と話したが、いまだにアルバイトのまま。その間に1店舗が閉店となり、そこに勤めていた社員の社内配置に頭を悩ませているのだから、社員になると信じて働くのはあまりにも能天気であと先を考えていないというもんだ。新入社員が数名入って、郊外店で勤務を始めた話も耳に入ってきているから、社員への道はほぼ閉ざれた。

 時給850円で昇給もなし。月5日の休みで、連休はまれ。勤務時間は、月に170時間。CFDの投資で10万円前後は儲けているけど、このままではジリ貧のままでいつかは貯金も底尽きる。こんな悪条件でもまだ勤めているのは、書店員が天職なのと古本屋で食っていこうと考えているからだ。新刊書店を取り巻く状況は厳しくなるだけで、好転の兆しはない。紀伊国屋書店ジュンク堂、丸善などの全国チェーン店は、駅のターミナルビルや街なかの商業施設に出店している。一方で、商店街や駅前にある中小書店は、どんどん姿を消している。よく立ち寄っていた本屋が閉店する光景を目にした人が多いのではないだろうか。統計を見ると減少に歯止めがかかるどころか、勢いが年々増しているのがわかる。1999年には約2万3000店あったのに、2012年には1万5000店を割り込んでいる(情報元:日本著者催促センター出版読書メモランダム)。13年間で、約8000店が姿を消した。1日に1店が確実に潰れている計算となる。

 

 この悲惨な状況になったのは、次に紹介する本を読んでもらえればよくわかる。10年以上前に書かれているが、いまと全く変わりない。

だれが「本」を殺すのか〈上〉 (新潮文庫)

だれが「本」を殺すのか〈下〉 (新潮文庫)

 もっといえば、40年前から何も変わっていない。早川義夫が街の本屋を1972年に都下で開業してからの奮闘をまとめたのがこの本。書店に立って日々感じていることが、そのまま書いてあるのには驚いた。

ぼくは本屋のおやじさん (就職しないで生きるには 1)

 

 新刊本は、出版社から取次(卸)に搬入されて書店に配本される仕組みになっている。なかには直販のみもあるが、ほとんどの本はこの流通にのっかている。取り分は、出版社が70%前後、取次が10%前後、書店は20%前後。500円の文庫本を1冊売っても、書店にはわずか100円程度しか入ってこない。その代わり、委託販売による再販制度に守られているから、返品が可能。ここが他の小売業と決定的に異なる。在庫リスクがほぼゼロである。本が売れないから、出版社は点数を大幅に増やし、売れもしない本が書店に大量に押し込まれる。毎日、250点以上の新刊本が発行されるから、店頭に並ばないものも多い。結局は、大部分の本が毎日、返品されるという悪循環に陥っている。

 お客からしてみれば、何を読んだらいいかわからないし、読みたいのに店頭にないことが多い。それは大型書店にまず配本されて、余りが中小にまわる仕組みになっているからだ。村上春樹の新刊だって、おそらく1冊もしくは2冊しか配本されたなかった郊外や地方の書店はかなりあると思う。初版と2刷り合わせて100万部達成しているが、全国の書店にほぼ同数の配本をしようとしたら、各書店は68冊の計算になる。だが、うちの店だけで150冊が届いた。大型書店は、もっと多いだろう。売れそうな本屋に売れ筋の本を重点配本するのはビジネスとしてあたりまえだが、それが中小書店を廃業に追い込んでいる。村上春樹の新刊は例外として、通常は、初版で5,000部刷られれば上出来。売れ行きがよければ、重版をかける。これじゃあ、中小書店に初回配本されることはほぼ絶望的だというのがわかるだろう。

 つまり、新刊書店を小資本でやろうとしても喰っていくのは限りなく難しいといえる。利益率20%強なうえに求める本が入ってこないことが多いのだから。ブックオフや図書館の影響も大きい。昨年7月、下北沢にB&Bという新刊書店が開業した。ビールやソフトドリンクが店内で飲めるだけでなく、本にまつわるイベントをほぼ毎日開催。さらに店内の椅子や本棚も販売することで、本以外の収益を増やしてこれからの街の本屋を成り立たたせようと奮闘している。

 レジに立っていると、印鑑や履歴書など文房具を置いてませんかとよく聞かれる。ひどいのはコピー機ありませんか。「もし置いている本屋があったら、著作権法上まずいだろ」といつも心のなかで突っ込んでいる。本屋も本だけでなく文房具やカフェなどを併設して売り上げを確保していかなれば、成り立たなくなってきている。