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その時々の興味あることを節操なく書き綴っていきます。

いま古本屋を開くということ

ぼくはオンライン古本屋のおやじさん

ぼくはオンライン古本屋のおやじさん

ヘンな本あります―ぼくはオンライン古本屋のおやじさん2

ヘンな本あります―ぼくはオンライン古本屋のおやじさん2

  フリーライターの北尾トロさんは、1999年10月にオンライン古本屋を開いている。今から14年前だから、インターネット黎明期にあたる。この2冊は、オンライン古本屋を始めるまでの経緯とその後の営業をわかりやすく書いてある。これを読んで、店舗を持たない古本屋に大きな可能性があると思ってはいけない。あくまで当時の話であるから、その後の歩みをたどれば、どんな人でも喰っていくには難しいことはわかるだろう。アマゾンのマーケットプレイスを見れば、1円や10円の文庫本が溢れて、送料を入れても300円以内で手に入る。ブックオフや古書店の均一コーナーでお目当ての本を探す手間と時間を考えたら、アマゾンで買うだろう。

 この本のタイトルは、ミュージシャンの早川義夫さんが東京都下に開いた小さな新刊書店「早川書店」の日々をまとめたぼくは本屋のおやじさん (就職しないで生きるには 1)からもらっている。早川氏が音楽活動を辞めて本屋をやると決めた1970年代は、新刊の本屋を開くのは容易だった。だが、今はほぼ不可能に近い。なぜなのかは、別の機会で書くつもりだが、当時といまでも状況は全く変わっていないことに驚いた。

 古本屋のイメージは、まず暗い。本棚だけでなく通路までに本がうず高く積まれていて整理されている気配がない。奥のレジに黙って座っている店主は、もの静かで話しかけづらい。それとどこで儲けているのかよくわからない。ざっとこんなところだろう。毎日、おびただしい新刊の本が発行されるだけでなく、電子書籍はあり、活字離れと叫ばれてはや20年ぐらい。本を取り巻く状況はより厳しくなっているから、新刊書店の店舗数は年々減っている。古本屋はどうだろうか。もちろん厳しいが、先に書いたイメージの古本屋とは異なる新規参入がじょじょに増えてきている。

 雑誌「BRUTUS(No.756)」の特集は、古本屋好きだった。No.709で特集した本屋好きと対になっている。さすがはBRUTUS。お洒落でかっこよく編集していた。冒頭の文章の一部に、自分を含めた20代や30代の古本屋への想いが凝縮されている。

“一昔前にカフェや雑貨屋を開くのが夢だったように、古本屋を開くことが一つの憧れにさえなってきている。”

 その先鞭をつけたのは、COW BOOKSだと思う。現在は暮らしの手帖・編集長の松浦弥太郎さんが、2002年に中目黒に構えた小さな店だ。店内に電光掲示板があり、棚には吟味された本しか置いてない。店の真ん中にある椅子に座り、長机に肘をついてゆったりと手に取った本が読める。こんな古本屋は、それまでの常識でいけばすぐに潰れるはずだが、いまも続いている。本の量で攻めずに、質で攻める。さらには、店主や店のファンを作り、わざわざここで買う店(棚)づくりにしているのが大きい。

 BRUTUSは、本との「出会い」や「場」をやたらと強調していた。これは間違ってないと思う。わざと本の数を少なくして、ソファやテーブルを置いたリビングの空間を作りくつろいでもらう。だがこの店づくりで、喰っていけるのかと考えると非常に難しい。そのあたりは、吉祥寺の古本屋「よみた屋」店主・澄田喜広さんが「ネット時代の古本ビジネス」で詳しく述べている。

 じゃあ、いま古本屋を開くならどんな業態がいいのか。業態といっても外食産業のようにいっぱいあるわけじゃないが、いくつかはある。オンライン専門、店舗とオンラインの併売、店舗を持たずに目録販売(通信販売)のみ、業者間の市場取引が中心などだ。それから、専門型か総合型か。まずは、自分の好きな(強い)分野を生かして本の構成をしっかりと決めないことには始まらない。

 いったいかったい、オシャレな古本屋の寿命はどのくらいなのかも気になる。その答えの一つは、「ぼくはオンライン古本屋のおやじさん 」に登場したオンライン古本屋仲間のその後をたどればわかる。映画・芸能関連に強いオヨヨ書林は、金沢市内に2店舗を構えるまでになった。古書組合加入なので、従来型の古本屋のスタイル。メトロノームブックスは、ユトレヒトに生まれ変わり、代官山にオープン。さらにはギャラリーも運営。こっちは、本との出会いを重視している。北尾トロさんの杉並北尾堂は休業中。西荻窪のハートランドは店舗をたたんだが、そのあとに「旅の本屋 のまど」が入居している。杉並北尾堂は副業で運営していたことを考えると、専業のオヨヨ書林ユトレヒトは凄いといえる。杉並北尾堂が休業中なのは理由があって、本の町プロジェクトを立ち上げて、長野県伊那市高遠町にブックカフェ「本の家」をオープンしたからだ。

 サトウタナカ書店が古本屋として開業するにはどうしたらいいか。まずはオンラインを立ち上げて、ゆくゆくは実店舗を持つ予定にしている。サトウタナカ書店の屋号のままかはわからない。もっぱら喰っていける仕組みと棚の構成を日々考えている。